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「デットゥカオック」を見学するなどする 〜3日目・サフランボル〜


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2011.02.01
@Safranbolu, Turkey
「トルコ・ギリシア旅行」No.03
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 朝の目覚めだって、海外ではステキなのである。ヴェネツィアの安宿では教会の鐘の音で目を覚ましたし、台湾のホステルでは市場の賑やかなかけ声に起こされた。でね、サフランボルではコーランの礼拝の声で目覚めたのだ。近所のモスクのミナレットに拡声器がついていて、そこからお祈りの言葉が大音量で流された。時計を見ると5時だった。

 「なんて素敵なんだろう!」

 そう考えながらまた寝た。二度寝である。次に起きたのは8時過ぎだった。

* * *

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 1階の台所に下りてゆき、そこで朝食をいただく。なかなか雰囲気のあるキッチンだ。窓から差し込む光がきれいである。出されたのはトマト、きゅうり(シャキシャキとしないいかにも海外ふうのきゅうりだ)、トルコ風のハムソーセージ、チーズ、それからゆで卵。あとはパン、そしてチャイ。1000円前後で泊まれる宿としては、かなり良心的な部類の朝食だと思う。ヨシさんやカタリーナと一緒に食べた。ヨシさんは先に食べ終わって、外に出て行った。宿の旦那さんと雪遊びをしていた。

 ヨシさんはやっぱり面白い人だ。これはあとから聞いたのだけれど、このときヨシさんは旦那さんを哀しませてしまったらしい。旦那さんが彫刻刀まで持ち出してきて作った雪のウサギ。それを指差し「キュートなカンガルーですね」。いやいやどうしてトルコにカンガルーがいるんですか。

* * *

 宿を出て、まずは観光案内所に向かった。地図をもらうためだ。海外に行くとどんな小さな町にでも観光案内所がある。ツーリスト・インフォメーション。観光地はもちろんのこと、もっと小さな静かな町にでも、必ず置いてある。たいていの場合簡単な地図が用意されていて、その横には宿のリストが添えられている。

 日本だとそうはいかない気がする。たとえば盛岡にそんなものがあったっけ? あったとして、英語のしゃべれるスタッフはいたかなあ? 東京にもいくつかあるけど、東京のような大きな都市の場合「いくつか」じゃダメだと思うんだよなあ。
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 サフランボルの場合は観光地だから、観光案内所があるのは当然かもしれない。けれど日本語のできるスタッフがいるのには驚いた。「ここを出て、後ろに向かって、坂をのぼります。すると、博物館があります」。片言ではあるが、わかりやすい日本語を喋る。

 とはいえ「デットウカオック」は最初、何のことかわからなかった。何度も繰り返してもらい、よく聞いてみると、それは「伝統家屋」のことだった。資料館として公開されている民家があるらしい。「カオク」という言葉は、こういうところで外国人がしゃべる日本語ではない気がする。

* * *

 寒い朝だった。昨晩から雪が降っていただけのことはある。吐く息も白いし、それから、なんだか「寒い空気」というか「寒い雰囲気」というか、そんなものが町中を覆っていた。
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 だが「寒々しい」というわけではない。寒いだけである。むしろ町行く人々だったり、ガラス窓のなかで働く人は楽しそうに仕事を始めていた。街全体が活き活きとしていた。そういう意味では暖かい。まだ観光客の姿はまばらで、店主はパンを焼いたり商品を店先に並べたりしている。 <さあこれから1日が始まる!>  という期待感みたいなものが感じられた。そういうのって悪くない。
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* * *

 観光案内所で地図をもらったはずだったが、いきなり迷ってしまった。だいたいにして地図がアバウトすぎるのである。けれどこういう街歩きは迷いながらウロウロするのが楽しいわけで、しかもカメラを持っていると迷ったほうが楽しい被写体に出会えたりするわけで、私は坂を上りあの角を曲がり、あるいは坂を下りその道を進むなどした。
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「水圧をあげて効率的にトヨタ車を洗う警官」

 サフランボルは猫が多いな、と感じた。すこし歩いただけで何匹もの猫に出くわす。しかもサフランボルの猫は独特の表情をしていて、なんだか日本で見かける猫とはまったく違った表情をしているのだ。きっと野良猫で、食べるものも違うんだろう。幸せそうな生活をしている表情には見えなかったが、ここの猫たちにとっては当然の暮らしなのだろうから、私がなんやかんやいえることではない。
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* * *

 やっとのことで「僕はいまここにいる」と地図で確認できるところに戻ってきた。町を見渡せるというフドォルルックの丘である。ここで朝から別行動をしていたヨシさんと再会した。町が小さいのである。売店の前にはまた猫がいた。たわむれる少年の笑顔がかわいい。かわいすぎる。
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 いまさらガイドブックを読むと「むかしむかしこの一帯はサフランの花が咲き乱れていました」というようなことが書いてある。だからサフランボル。わかりやすくて良い。じゃあ「ボル」は何なんだろう。村とか、丘とか、そういう意味なのかな。

 サフランというのは、iPhoneアプリの「大辞林」には、料理などで香料に使ったり止血のための薬として使ったりなんてことが書いてあった。しかしまあ私は料理もするわけでもないし医学生でもないので、サフランという名前は聞いたことがあってもあまり馴染みはない。どちらかというとサフランボルがシルクロードの中継地点であり「馬の鞍や革靴作り中心とした商業都市だった」(『地球の歩き方』)といわれたほうが「なるほど〜」と思う。最も栄えたのは14世紀から17世紀とのことだ。中世からの歴史を持つ古い町なのだ。

* * *

 展望台の敷地内には1リラを払って入る。ここの公衆トイレは小便器が高くて困ってしまった。身長178cmの私でも、その、なんというか、ギリギリだった。

 私は町を高台から俯瞰するのが好きで、どこに行ってもコレだけは欠かさない。ヨーロッパの町に旅行したときは、教会の塔や時計台に必ずのぼった。あるいは街全体が坂になっているようなところだと展望台が必ずあって、絶対に足を運ぶ。もちろんそこにいく前には町をブラブラ歩き回る。そしてのぼってから「ああさっき歩いたのはあそこらへんか」とニヤニヤするのである。
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 天気が悪いせいだろうか。展望台には私しかいなかった。夏のあいだは観光客で溢れるのだろう、一息つけるテーブルやベンチが、屋根つきの東屋のようなところに置いてあった。と思っていたら急に陽がさしてきて、一気に景色が美しくなる。こういうとき「太陽ってすごい」と思う。なんだかこの景色を独り占めできた気がして、すっかり嬉しくなった。
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 敷地内にあったカフェに入る。ここも客は私しかいない。奥のほうでテレビがついていて、40代手前くらいのおばさんが熱心に政治の討論番組をみていた。私が入ってきたのに気付くと、そばにいた息子をカウンターによこした。10歳くらいだろうか。私が「チャイ」というとにっこりして、好きな席に座ってください、というようなことを言った。

 手袋を外しマフラーを外し、待っていると、少年がチャイを持ってきてくれた。テーブルに置くときもニッコリ。本当にかわいらしい。いったん奥に戻ったのだけれど、おばさんの声がして、今度は金属製のつっかえ棒のようなものを持ってきた。石炭ストーブに火をつけ、中をごそごそつっつきまわす。確かに暖かくなってきた。

 少年は、私が「写真を撮っていい?」と訊くとかなり恥ずかしそうな顔つきをした。本当にかわいい。火がつくと少年は奥のほうに戻っていったが、またおばさんの声がして、またストーブをいじりはじめた。「もう大丈夫だよ」と私が言うと、さらににっこりして、また奥のほうへ戻っていった。私はここでノートを取り出し、日記を書いた。

* * *

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 町の中心部に戻ると観光客が増えていた。ちょうど昼を過ぎたくらいだった。バスできた日本人のツアー客もいる。韓国人も多いようだった。何故この町はこれほどまでに東アジア人が多いのだろう? それから修学旅行生にらしき一団にも出くわした。ヴェールをかぶっているあたりさすがトルコである。そして再びヨシさんに会う(本当に小さい町なのだ)。ヨシさんはフィリップ・トルシエに似ている高校生と友達になって、一緒に歩いていた。
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 賑やかな通りを歩いていたら、「食べて」と言われ、ロクムの試食をした。ロクムはアーモンドやピスタチオのまわりを水あめで固めたような砂糖菓子で、サフランボルの名物とのことである。ちょうど読んでいた村上春樹の『雨天炎天』には、ルクミという菓子が出てきた。村上がギリシャのアトス島で飽きるほど食べた、あまりにも甘いすぎる菓子である。ロクムとルクミ。たぶん同じものなんだろう。

 実はさっきも同じ店の前で試食をしていたのだが、そのときはヨレヨレのおじいさんだったから買わなかった。けれど今回は元気な女の子たちで、しかも写真も撮らせてもらったので、5リラで一箱、買ってしまった。5リラということはまあ300円くらい。まあ、それくらいならね、という感じである。

 近くの店ではリストバンドのようなものも試させられる。買う気がなかったから、あんまり長居はしたくなかったのだけれど、5リラのものや10リラのもの、それぞれ時間をかけて試させられた。職人風のおじいさんはとても狭いスペースで作業をしていた。
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* * *

 博物館や例の「伝統家屋」などを見学していたら、あっという間に時間が過ぎて18時すぎになっていた。おかしいな。こういう街歩きって大抵時間が余ってしまうものなのに。ヨシさんとは19時に宿で、と待ち合わせていた。一緒に夕飯を食べよう、そして同じ夜行バスでイスタンブルに戻ろう、という話をしていた。旅は道連れというヤツを考えていた。

 疲れていたので30分以上前に宿に戻ると既にヨシさんがいた。共に夕食を食べる。昨日も行った店だ。ヨシさんは日本語で店主のおばさんに話しかけていて、何やら盛り上がっていた。すごいよなあやっぱりこのひとは。ここではギョズレメやサフランライスなど土地のものをいただく。店内のテレビでは昨日のテレビドラマの続きを放映していた。覚え易い単調なテーマ曲が繰り返される。
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 バスに乗り、新市街に向かった。昨日とは違って、隣に旅の先輩であるヨシさんがいる。とても心強かった。ヨシさんがSDカードが欲しいというので、私たちは近くをぶらぶらした。小さな電器店に入ると、2GBのSDカードがあって、ヨシさんは購入した。「長旅でも簡単に入手できるのが良いですな」。私たちはそんな、平和な会話をしていた。

 しかしいざMETRO社の事務所に行くと「今日の夜行バスはもうありません」と言うのである。

 えっ! という感じだった。ヨシさんにも宿の旦那さんにも「夜行バスなら当日券もあると思うよ」と言われていたからだ。

 「キャンセルはありませんか? もう少し遅い便でもいいんですが」

 私はくり返しそう尋ねたが、窓口のおじさんは首を振るばかりだった。いったんMETRO社の事務所から出て、隣にあったサフラン社の事務所でも聞いたみた。だが同じくダメだった。ふむ。そうなればしょうがない。「旧市街に戻りますか」と私は言った。するとヨシさんは「あ、僕はチケットを持ってるんだよ、昨日買っておいたんだ」。

 あ、そうですか。へえ。

 もうこうなればしょうがないので、私ひとりで翌日午前中のチケットを買い、旧市街に戻ることにした。

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 チェックアウトした宿に戻る、というのはとても情けない感じがするものである。宿の旦那さんに「もう1泊させてください」と言うと「あれ?」という顔をされた。しかも旦那さんには「君は昨日のぶん、払った?」と聞かれた。私は財布をみて、到着日に両替をした金額や、今日使った金額などを計算してみた。するとどうやら払っていなかったようだった。むむむ。2日分の40リラをここで支払った。

 部屋に戻るとカトリーナがいて、「I'm back」というと憐れんだような目つきをされた。今日の夜行バスで戻っていれば明日は1日、イスタンブルで過ごせたはずだったのだ。ぬぬぬ、という感じである。自分がちゃんと確認していればこんなことにはならなかったのだ。明日1日をバスのなかで過ごすことになるのか。そう考えると悔しくてしょうがない。
by photo-by-kohei | 2011-02-20 12:34 | Turkey


デジタル一眼初心者が、四苦八苦しながら写真を撮ります


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