台北駅で切符を購入する
台北の中央駅はなんだか寒々しい、寂しさのようなものを感じた。まるで東欧や、あるいは行ったことはないけれどモスクワに来たかのような印象を受ける。駅までやってきたのは、九份という町に行くためである。ところがチケットを買おうにも、台北駅には特急やら在来線やらがある。どこに並べばいいんだろう? 最初から迷ってしまう。
えいやっ! と心を決めて列に並ぶ。ちょびヒゲのおじさんが窓口に座っている。列に並ぶこの時間だけは、どこの国へ行っても緊張する。言葉ができないからだ。九份に行くには、まず瑞芳という町まで電車で向かう。そこからはバスに乗る。けれど「瑞」の発音がわからない。「芳」はもっとわからない。まわりに私のような観光客はいない。
さて私の番になり、ちょびヒゲ氏に「你会説英語マ? 日語マ?」と聞いてみた。英語か日本語はできますか? と質問したつもりである。ガイドブック巻末の「緊急時に使えるフレーズ集」をそのまま使った。とはいえ四声だってかなり意識した。少し恥ずかしいくらい大げさに発音してみた。もうコンビニに逃げるような旅行者ではいたくない。さて通じるか。
するとちょびヒゲ氏は首を横に振った。そっか英語も日本語もできないのか、厄介だな。…って、あれ? 通じてる! チキン旅行者卒業だ! 嬉しかった。自分の中国語が通じた——。けれどああそうだ、切符はどうしよう。ではしょうがない。私は手元のノートに「瑞芳」と書いてみせた。するとちょびヒゲ氏は「One way? All right seventy eight dollars」と返すのである。流暢なアメリカ英語で!
外国で切符を買おうとしてうまくいかないときは「きっと
昨晩夫婦ゲンカでもしたんだろう」と思うことにしている
by photo-by-kohei
| 2011-01-11 23:01
| 台湾