「留学生歓迎」
「留学生歓迎っていうのは、好きじゃないんだ」。アレックスはそう言うのです。アレックスは私がロンドンに留学したとき知り合った、イギリスの友人です。現在は交換留学生として、私の大学で学んでいます。中学生の頃イギリスで剣道を始めて、そこから日本に関心を抱きます。高校を卒業して、日本語学科があるイギリスの大学に入学しました。
私の就職が決まったお祝いとして先日、アレックスともうひとりオランダ人との3人で高田馬場へ飲みにいったのでした。これはそのときに、話したこと。
「留学生歓迎」の表記は、学内で発行されている情報誌で見つけたそうです。確かに私の大学には、サークル団体やゼミ講座(寝ていても単位が来る科目名がつぶさに並べられている)を紹介する情報誌があります。学生団体が毎年4月、発行しているようです。
アレックスいわく「留学生歓迎という項目があること自体、留学生歓迎でないサークルが存在するってことだ」とのこと。それが納得いかないらしい。母国イギリスじゃ、そんなことをしたら差別になるのだとか。
けどまあ正直、そんなのは当然だと思うわけです。
イギリスっていうのはご存知、移民の国で、街にはアジア人やらアラブ人やらがあふれています。外国から来た留学生も、もちろん多い。それに比べて日本に滞在する留学生は少ない。だから外国人を受け入れた経験が少ない。日本語ができない人がぽんっ! と自分たちの集団のなかに入ってきたら、いろいろと面倒なのです。しきたりを説明したり、誰か英語のできるひとをつけたり。
しかも留学生がサークルに入ってくるときというのは「日本語の勉強になるから」とか「日本文化を体験してみたいから」とかいう理由が多い。どんなに熱心に接してあげても、数ヶ月もすれば「ありがとう、さようなら」といって母国に帰られてしまう。留学生に時間を割くことに億劫になるのは、当然なのです。
だから日本の学生サークルが留学生の受け入れに消極的な事情は、十分に理解できる。
問題はそういう疑問を留学生から投げかけられたときなのです。日本は今後、ある程度外国人を受け入れるような方向に舵を切っていかないといけない。それは明らか。だから外国人への差別というか、区別というか、そういうものは撤するべき。アレックスが言うことは正論なのです。
けれど日本人にも日本人の論理がある。とはいえアレックスは私が「イギリス的思考」を理解している人として接してくる。そういうとき、困るわけです。難しいですね。
by photo-by-kohei
| 2010-05-03 12:02
| 東京